他人事ではなく自分事

皆様こんにちは。浄土真宗 武庫之荘 寺院 真光寺 楠木光雲です。

本日は、タイトルの通り、どんなことも他人事ではなく自分事に考えていただきたいということをお話しさせていただきます。

浄土真宗が大切にしている書物はたくさんあるのですが、その中に『歎異抄』という書物がございます。

この『歎異抄』の中には、親鸞聖人(師匠)と唯円坊(弟子)のやり取りが説かれています。

あるとき、親鸞聖人は唯円坊にこのようなことをお聞きしました。

「唯円よ。私の言うことを信じるか?」

唯円坊は答えました。

「はい。師匠の言うことを信じます。」

親鸞聖人は「そうか。」とうなずきながらもう一度確認するかの如く、お聞きします。

「では、本当に私の言うことに対して背かずに、どんなことも聞き受けるのだな?」

唯円坊は真剣な面持ちで、答えました。

「絶対的に信頼しています師匠の言うことですから、どんなことも謹んでお受け致します!」

少し沈黙があり、親鸞聖人は口を開きました。

「そうか。それでは、今から1000人の人を殺めてきてくれないか?そうすれば、あなたの往生は確かなものとなる。」

唯円坊は案の定、驚き困った様子で答えました。

「それは、いくら師匠の言うことでも聞き受けられません。私の器では、一人として人を殺めることなど出来ません。」

親鸞聖人はそれに対し「では、何故私の言うことに背かないなどと言ったのだ。」とおっしゃった後に、唯円坊を諭されます。

「だから、これで分かったであろう。私たちの心は思い通りにはならないのである。往生が間違いないものとなると言われたならば、本当は100人、1000人と人を殺めることができるはずである。しかし、それが出来ない。では、人を殺めていないから、私たちの心は良い心なのだろうか。そうではないであろう。たまたま、人を殺めるという因縁にないだけなのだ。つまり、うらを返せば、条件さえ整ってしまえば何をしでかすかわからない、そしてときには100人、1000人と人をも殺めかねない私たちなのだ」

このようなやり取りが『歎異抄』には描かれています。

色んな情報やニュースが次から次へと入ってくる時代です。

その情報やニュースに対して批判や否定ばかりして他人事に考えるのではなくて、自分もそのようになってしまうかもしれないのだ、というように自分事に捉えていけるようになれば、視野はどんどん広がっていくのではないでしょうか。

特に老病死という根本的な悩みに関して、私たちは自分事には中々考え難いです。

お勤めをする際に、しっかりと向き合っていただければ幸いです。

 

南無阿弥陀仏

 

浄土真宗本願寺派 真光寺

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